分からん、なにも……

オタク・レビュー

Die Klute-Planet Fear

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今回紹介するのはインダストリアルメタルのスーパーグループです。メンバーはLeæther StripやKluteでお馴染みのClaus Larsen、Die KruppsのJürgen Engler、そしてFear Factoryの

Dino Cazaresとかなり豪華です。しかしながらこのバンド、何かしっくり来ないんですよ。もちろんおれがClaus Larsenの音楽はかなり聴いているがDie Kruppsは初期のみ、Fear Factoryに至っては殆ど聴いていないというのもあるんでしょうが、メンバーの豪華さの割にはいつものClaus Larsenと変わんねえじゃんというのを感じました。インダストリアルメタルって割と全部同じ感じになる傾向があると思うんですが、それでもこれは変わり映えしなさすぎる。それとシンセベースとドラムマシンの音が大きすぎるというのがあります。1曲目のIf I Dieを再生した途端去年一番音圧を感じた大森靖子の新譜を超える、まさに音圧音圧音圧といった音作りに圧倒されます。こんなに音圧必要か?リズム隊の音量が大きすぎてギターが聞こえにくい曲があります。先行リリースされたIt's All In Vainを聴いたみんなからそう言われたからかLouder Guitar Mixなるものを公式がアップしてしまいました(https://youtu.be/yIipfCq611U)。ラウダーギターミックス、面白すぎる。ボーカルも、これもインダスメタルの宿命と言えると思うんですが、ディストーションをかけて怒鳴ってるだけなのでいつもの感じです。Jürgen Englerが歌おうがClaus Larsenが歌おうが関係ない。っていうかどっちが歌ってるか分からない。曲はかなり良いです。まあ様式美的な。

 

点数をつけるとするなら70点です。色々書きましたがボディ系のリズムにザクザクギターという方法論はKluteやPsychopompsあたりと同じなので好きな人には堪らないと思います。

Усыпальница Духа-Посмертный грех

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今回紹介するのはラスエフでゴスを漁って偶然見つけたバンドです。なんて読むのか分からん。分からん、なにも……(ブログタイトル回収)。ちなみにAnima Corpusという意味らしいです。凄い名前だな。ラスエフでgothicのアーティストを調べて検索結果を後ろから見てみると結構キリル文字のアーティスト名が多いんです。そんでそれを聴いてみると、結構新しめではあるけどゴスの基本をちゃんとおさえた良質なアーティストが多い。ロシアは隠れたゴス大国なのかもしれません。いつかロシアゴスの特集とかやってみたい。

 

このバンドの音楽性は仄暗ゴスフォークという感じです。Frequency DriftとDeath In Juneを合わせてリズムの主張を弱くしたらこんな感じになるんじゃないでしょうか。知らんが。アルバムジャケットの雰囲気がDeath In Juneっぽい気がする……しない?ギターなんですが、曲によってはディストーションのかかった音を出してきてそういうところもLast期のFrequency Driftっぽいなあと(つまり大好き)どうやら活動初期にはブラックドゥームメタルをやっていたらしいとのこと。仄暗さはこういうところ由来なのかも。

 

今回のアルバムは2001年に出た恐らく唯一のアルバムです。良いバンドなのでこれからも活動してほしいですけどそんな昔に活動休止してたら望みは薄いかも……

 

2曲目のЛитургияは擦弦楽器の重苦しいフレーズから始まり、うっ、ゴス〜〜!というようなメルヘンチックな盛り上がりを見せます。力の抜けた女ボーカルがちょっとアシッドな雰囲気を出してます。

 

4曲目のПомешательствоは綺麗なピアノが印象的です。しかし、綺麗ではあるがどこか暗い。Myrkurあたりにこんな曲ありそうですね。

 

5曲目のМенуэт забвенияはこれまでの曲と似たようなサウンドで終わるかと思いきやディストーションのかかったギターが空間を切り裂く感じでとてもかっこいいです。

 

7曲目のБегствоが自分的にはベストトラックです。フォークが基本ではあるものの、この曲は割とリズムがちゃんとしていてそういうプログレっぽさを感じます。アコースティックギターではなくエレキギターを使ってるのもそういう感じを強めてるんでしょうか。一回静かになった後、ディストーションのかかったギターが登場します。なんかフレーズから展開までWhite Willowっぽくて最高!

 

ラストの9曲目Наказаниеはこれまたとても重く暗い曲です。ずっと同じフレーズを繰り返し、ボソボソと語りが乗っかるというのは仄暗系のお決まりですが(そうか?)上手くこなしています。

 

こんな感じです。ロシア人はマイナーキーが得意という話を聞いたことがあるのですが、それも納得の出来です。ロシアの薄暗い雪原が頭に浮かんでくる見たいですね。点数は90点です。ちょっと同じような曲が多いかな〜ということで10点減点。なんかの間違いでまたアルバム出してくれないかな〜

汝、我が民に非ズ-つらい思いを抱きしめて

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芥川賞作家として、そして伝説のバンドINUのボーカリストとして有名な町田康(町田町蔵)の新ユニットです。2014年頃からリハーサルを始め、2017年にワンマンライブ、そして2018年の9月にこのアルバムが発売されました。町田康の音楽作品としては8年ぶりのものになるみたいですね。ギタリストの中村 JIZO 敬治とキーボーディストの大古富士子が作った曲に町田康の著作でも見られるような独特なリズムを持った詩が乗っかるものです。曲はロック、ソウル、R&Bの影響が強い印象ですが、どうもそう言った黒い音楽を白人が演奏したものを真似しているように聴こえます。しかし耳によく馴染む。俺はこういうところから一つのバンドを連想します。それは今世界中でブームになっているクイーンです。

 

ラカン精神分析学者として恐らく日本で一番有名な斎藤環はクイーンについてこう言います。

「クイーンはいわゆる"ロックではないと思います。よくロックファンは『クイーンはビート、グルーブがない』と言いますが、その通りです。(中略)歌詞もほとんどが取ってつけたようで、オペラ座の夜でも偽物のドラマチックさを感じます。でも、このフェイクっぽさこそ、多くの日本人がこれなら聴ける!と飛びついた理由かもしれません」

「日本人はオリジナルを変転させ、ときにそれをパロディするような"フェイク"を愛するDNAを持っていると言えるかも」

(共に大人のロック特別編集 永遠のクイーンに掲載されている斎藤環のインタビューから)

 

思えばクイーンはハードロック、分かりやすいポップ性、クラシックなどあらゆるジャンルを取り入れている、というよりはごちゃ混ぜにしています。これは前述した汝、我が民に非ズの音楽性と共通するところがあります。また、黒い音楽を白人が演奏したものの真似というのもパロディしたフェイクですよね。さらに歌詞ですが、文学的ではあるものの、どこか力の抜けたようです。リズムもロックなのに様々な要素を取り入れ、さらに独特なリズムの歌によってかなりロックらしからぬものになっています。このように、かなりクイーンと通じる部分があり、それがこのバンドの耳当たりの良さ、聴きやすさを演出しているのではないでしょうか。

 

1曲目のだから君は今日も神を見るを再生すると、ジャジーなピアノイントロから町田康の独特な言葉遣いの歌詞が炸裂し、かなり渋い音を出すものの黒さを演じきれてなく白人っぽいサックスが入ってきます。かなり強烈ですね。町田康の歌唱法はINU時代からかなり変わっているように聴こえます。思えば当時20歳にもなっていないが現在は56歳なので当たり前といえば当たり前なんですが、円熟味を増し、声が少し低くなったように感じます。

 

8曲目のいろちがいはおとなしく始まりますが、プログレを彷彿とさせるような不安定な音使いになります。こういう不穏な感じ大好物なんでこれがベストトラックです。これ曲も後ろで暴れるサックスがメル・コリンズっぽいし曲もどこかKing Crimsonっぽいな…….。町田康の声がちょっとgibkiy gibkiy gibkiyのkazumaみたいに聴こえるのは多分歳を取った男に共通する渋さによるものでしょうね。カッコいい。

 

9曲目の白線の内側に下がってお祈りくださいはダーティーなギターリフが懐かしさとともにロックらしさを感じさせます。歌詞は重いように聴こえるけどちょっとコミカルな部分もあります。一番単純にカッコいい曲と言えます。

 

このバンドを聴くといい歳のおっさんが酒を飲んでるイメージが頭に浮かんでくるんですが、ジャズやR&Bなどいわゆるお洒落な音楽の要素を含んでいるにもかかわらず、庶民的な飲み屋っぽい印象を受けます。この辺が町田康の小説そのものっぽいですね。歌詞だけでなく音までそれっぽくなるとはお見事。点数をつけるなら95点です。このごちゃ混ぜの音楽性のまま突き進んでほしいものです。前述した通りクイーンと同様日本人なら馴染みやすいと思うのでぜひ聴いてみてください。ストリーミング配信もあるので。

Ms. isohp romatem-Cicada

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MUSEやんけ

 

MUSEやんけ

 

Showbiz期のMUSEやんけ

 

失礼しました。思わず俺の中の月ノ美兎が暴走してしまいました(俺は月ノ美兎なので)。このアルバムはマジで凄い。まずは今年出たこの曲を聴いてみてください(https://youtu.be/A4O5z4vr3Eo)。エッ、アジア人?そう、これは韓国のバンドなんです。正直このバンドを知るまで韓国の音楽はK-POPのイメージしかありませんでした。まさかこの国からこんなバンドが出るとは……

 

このバンドはギターボーカルの주호(Juho)、ギターの규호(Kyuho)、ベースの건(Geon)の3人です。ギターのKyuhoが組んでるMadmans EspritというバンドがV系デプレッシブブラックメタルという感じで良いのでそちらもいつか……。過去にはドラマーがいたらしいですが、現在ドラムは打ち込み音源を使っているようです。post visual rockを自称しています。他にもurban decadenceとも言っており、たしかに洗練された退廃っぽさを感じます。Madmans Espritもこのバンドも2014年にアルバムを出し、今年になって新曲やアルバムを出しているので徴兵されてたのではないかと思います。知らんが。今回レビューするのは2014年に発表された1stアルバムなんですが、この時期の映像(https://youtu.be/EKX1-E88y0A)を見ると、ルックスがかなり違うことに気付きます。ぶ、V系じゃなくて普通にオルタナやってそうな冴えないにいちゃんだ…….。しかしながらこのアルバム、全体を通してMUSEの1stアルバムであるShowbizの後半部分をギターの本数が多いぶんレディオヘッドらしいアレンジで弾いたような音なんです。曲によってはJeff Buckleyっぽさもある(というよりMUSEJeff Buckleyっぽい曲Falling Downっぽさかも)。このようにオルタナヒーローの影響を感じさせる音楽性は、その辺りの音楽が好きならオマージュ元が脳裏に浮かんでくるのではないでしょうか。

 

1曲目のThere was no pillow between usはメロディがJeff Buckleyっぽいものの、トレモロのかかったギターが作り出す音響はレディオヘッドそのもの。その2つが混ざり合った結果MUSEっぽくなっているんだなあと思います。サビでの盛り上がり方はMUSEをそのまま取ってきたような音です。っていうかMUSEがもしツインギター体制だったら本当にこういう音になったかもしれないと思います。限界MUSEオタクの俺が言うんだから間違いない。

 

2曲目の두번째(よ、読めない……)はベースラインとヴァースの妖しい雰囲気が完全に初期MUSEとなっており、この曲が俺的ベストトラックです。ギターソロもワーミーを使わないSunburnって感じですね。堪らない。

 

5曲目のMSではマスロックの複雑じゃないリフみたいなフレーズで進んでいきます。この曲が一番MUSEっぽくないかもしれません。それでも十分にMUSEっぽいんだが……。

 

6曲目のDistance from you and the starsはスケールの大きいギターサウンドシューゲイザーっぽくもあります。Do We Need ThisとかPink Ego Boxに雰囲気が似てますかね。MUSEと違うところは歌が入ってるところでももう1人のギタリストが弾くから凝ったフレーズになるところな気もします。その分サビの爆発度は劣るけど全体を通して良い音響が作られる。

 

聴きどころとしてはこんな感じです。Apple Musicでは冒頭に紹介した曲が入ってるシングルしか聴けませんが、bandcampで今回レビューしたアルバムが全曲聴けます。点数をつけるなら100点です。だって最高だし。ここ2日間で10周以上してしまった……。

Bleeding Moses-Coconut

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レディオヘッドって次世代に残した影響は大きいけど明確なフォロワーっていなくないですか?初期のMUSEレディオヘッドのパクリだと叩かれていたけど明らかにメロディの種類が違うし、何よりクラシックの影響が大きかった。しかしポーランドに音楽性、メロディ、演奏、歌、どれをとってもレディオヘッドなバンドがいたんです。それが今日レビューするBleeding Moses。

 

Bleeding Mosesはポーランドのバンドです。言われてみればチェコハンガリーのバンドはそれなりに知ってるがポーランドのバンドはRiversideとXanaduぐらいしか知りません(偏った情報)。東欧のバンドってこれまでにレビューしてきたように声が特徴的だったりメロディが変だったりするんですが、このバンドにはそういうクセがありません。っていうか作曲とボーカルはトムヨークがやってるのか?と思ってしまうほど似ています。レディオヘッドって時期によって音色がかなり違ってきてるんですが、このバンドはそのどの時期というわけではなく全体的にレディオヘッドを匂わせてきています。お見事。2016年に8曲入りのセルフタイトルアルバムでデビューしたんですが、その時の音楽性は暗黒要素の強いレディオヘッドという感じでした。Kraken Love(https://youtu.be/UZRo5eUDCoM)とか聴いていただけると分かると思います。しかし2017年に出したシングルBlinks (Of Places Where I Loved No One)では暗黒要素が薄れ、レディオヘッドの綺麗な曲をさらに綺麗にしたような音になりました。そして今年3月に満を持して発表されたのが今日レビューするCoconutというわけです。

 

先行シングルはキーボード主体の音作りでしたが、アルバム全体を通して聴くとストリングスの音色こそするものの曲によっては結構ギターの音が聴こえてくる印象です。あとボーカルはトムヨークに比べれば低い声も出せてるように聴こえます。

 

2曲目のNo Plants and Dogsが俺的ベストトラックです。最初の10秒ぐらいはオッ、オケコンか?って感じなんですがベンズっぽくなります。途中で入ってくるエフェクトのガッツリかかったギターなんてまさにそうですね。この曲は例外的にどのアルバムっぽいって言うことができるから好きなのかも。

 

4曲目の'70sはレディオヘッドというよりトムヨークのソロっぽさを感じます。シンセの音と一緒にパラパラと降りてくるピアノの音がとにかく綺麗です。

 

9曲目のDressが人気曲らしいですね。レディオヘッドのギターの音ってクラウトロックを意識してリバーブがほぼかかってないんですがこのバンドは結構かかってますね。ミキシングも残響に意識が向いてるように聴こえます。その辺がこのバンドの個性とも言えるでしょう。

 

10曲目のA Ballad For A Night Doormanは盛り上がるところがかなりシューゲイザーっぽいです。これはこのバンドとしてはかなり冒険ではないでしょうか。

 

ラスエフでこのバンドに付いてるタグを見たらradioheadとあり、たしかに似てるけどアーティスト名をタグにするなよと思った所存です。このアルバムの点数をつけるとしたら95点です。最高なんですが、やはり活動初期の暗黒レディへ時代の方が好きなので。

Rosen Kreuz- Volume Climax

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今回レビューするのは90年代前半に活動していた日本のバンドの解散ライブを収録したライブアルバムです。

 

このバンドは時代を先取りしすぎた感があります。質の高いインダストリアルメタルなんですが、1stアルバムが90年で解散ライブが93年7月23日です。よく考えてみてください、大流行してその後何年間かをインダストリアルで染め上げたMinistryのPsalm 69やNine Inch NailsのBrokenが92年のアルバムです。ということはそれらの作品より前からインダストリアルメタルをやっているということになります。Ministryがインダストリアルミュージックにギターを取り入れたThe Land of Rape and Honeの2年後にこの音楽性でデビュー。先見の明がありすぎではないでしょうか。日本の音楽の流行は海外の10年遅れという説があり、実際80年代にゴシックロックが流行った10年後に耽美な音楽性のビジュアル系が流行っています。そういう中でこの音楽性は何度も言いますが早すぎたんです。まあルックスはX JAPANっぽいんですけどね。よく聴くとMinistryよりもパンクやハードコアの要素が強いように聴こえます。メタラーがインダストリアルを取り入れたタイプのバンドかな?と少し聴くと思うのですが、ベーシストのYOU-MIは解散後Def.Masterというバンドを組み、そのバンドがかなりインダストリアルに寄った音楽性なので、MinistryやPsyclon Nineとは違いメンバーの音楽性がバランス良く発揮されたバンドだということが分かります。

 

1曲目のLoud Sonic Chainsaw Your Machine Extacyを再生すると「今日で本当に最後です盛り上がってください」という声が……冷徹で凶暴な音楽性なのにそこ敬語なんですね。育ちの良さが出てるぞ。ギャップ萌え。曲名が表すようにチェーンソーの音が鳴り響く曲です。チェーンソー!エクスタシー!って叫ぶのがいいですね。音は凶暴ですが結構キャッチーです。

 

これぞインダストリアルメタル!というリフで疾走しギターソロもスピード重視の6曲目Madmans Revengeから打ち込みの音を混ぜ、これ以上ないほど暴力的な音を出す7曲目のBlusterがライブ一番の盛り上がりどころな気がします。

 

全体を通して冷徹で残虐な音で好きな人にはたまらないとは思うのですが、似たような曲が多く聴こえるので点数は87点ぐらいです。しかし日本のバンドってだいたい湿った感触があるのにここまで乾いた音を出せるのはこのバンドしかいないでしょう。

 

当然のようにストリーミング配信はされてないしプレミアがついてしまって求めにくいアルバムですが、この記事を書いている2018年12月現在メルカリで3千円弱で1つだけ出品されています。メルカリをやっている人はもちろんやってない人はこれを機にメルカリを始めて急いで買うことをオススメします。多分これからもっと高くなるので。

The Lonely Bears-Injustice

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今日レビューするのはJeff BeckのGuitar Shopで共演したボジオとTony Hymasを中心に結成されたスーパーグループの92年作の2ndアルバムです。この2人とあのピンクパンサーのテーマを吹いたサックスのTony Coe、Jack BruceWham!の作品でも弾いたギターのHugh Burnsと、かなりメンバーが豪華です。90年に結成され、94年にラストアルバムを発表と、結構短期間ですね。もっとこのバンドでやってほしかったです。

 

内容はまさに名人達による変態ハードジャズロックと言えるでしょう。流石全員テクニックがありますが、テクニックを見せつけるというよりはそのテクニックを音楽性に反映し、4人の個性をぶつけることで全く新しい音楽を作っているというイメージです。特にボジオの機械的なドラムや、Hugh Burnsのハードロック的とフリージャズの間を行き来するようなギターソロがこのアルバムの聴きどころです。このアルバム以外聴いてないのですが、かなりハードロックに寄った作風らしいので聴き始めるならこれを最初に聴くと良さそうです。

 

1曲目のMarch Past 29 145 749を再生すると、いきなりボジオとしての正解の音みたいな人間っぽさを全く感じない機械的なドラムが鳴り響き、完全に優勝……(オタク)キーボードがメインフレーズを弾き、それに続いてTony Coeがとても彼らしい渋い音色でメインフレーズを吹きます。くぅ〜、最高のオープニング。ギターはあまり目立ってないんですが、ライブ映像を確認するとRobert Fripを思わせるような機械的なフレーズをタッピングで弾いてます。その後はギターソロ。ハードロック的ながらかなりフリーな印象を受けます。ギターソロが終わるとドラムがより一層おかしくなり、ボジオは完全に手がつけられない状態に……よくこんな暴れた後にメインフレーズに最後戻ってこれるな……1曲目が最高すぎてめっちゃ文量書いてしまった。とにかく良いんです。

 

3曲目のKill King Ratは凄いフレーズをみんなでユニゾンして弾くのが印象的です。ちょっとこのフレーズX-Legged Sallyっぽい。ギターソロがやっぱりハードロックでフリー。多分メンバーの中で一番ロックに近いのはギターのHugh Burnsではないでしょうか。

 

5曲目のEntre Le Tigre Et L'EuphrateはメインフレーズがちょっとKing Crimsonっぽい、不気味だけど取っ付きやすい感じがします。静かな曲なんですが、こういう曲調でもボジオのドラムのおかげでエスニックテクノ的な雰囲気を感じれます。

 

変態ハードジャズロックと言いながら半分は静かめな曲なんですが、そういう曲でも4人のヤバさがひしひしと伝わってきます。ストリーミング配信はされてないんですがボジオ公式からこのアルバムの曲をやるライブ映像がアップされてるのでこれを見てからCDの購入を考えてみてください(https://youtu.be/7x_eG3mTPNo)サムネがボジオのイキ顔で笑える。ライブだと結構テクニックを見せびらかす感じになってる……よりハードになってますね。点数は95点です。かなり良いんですが、もうちょっとハードロックに寄った姿も見てみたいですね。どうでもいいがこのアルバム、私を構成する81枚に入っています。